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日別アーカイブ: 2025年11月13日

第21回就労支援雑学講座

皆さんこんにちは!
一般社団法人まつり、更新担当の中西です。

 

さて今回は

~“働く力”を未来へつなぐ支援~

 

私たちは「働くこと」を、つい「いまの収入」や「当面の生活」を支えるものとしてだけ捉えてしまいがちです。しかし、就労支援の現場で見えてくるのは、それだけではありません。働くことは、その人が社会とつながり、自分の役割を実感し、人生の時間をどう積み重ねていくかという「未来」と深く結びついています。

だからこそ、就労支援の本質は「仕事を紹介すること」だけではなく、その人の中に眠っている「働く力」を見つけ、育て、未来へとつなげていくプロセスそのものだといえます。

ここでは、就労支援における「働く力」を未来へつなぐとはどういうことなのか、その具体的なポイントを、支援者・利用者・家族・企業、それぞれの視点も交えながら考えていきます。


1. 「働く力」とは何か

「働く力」という言葉は非常に広く、あいまいにも聞こえます。ですが、就労支援の現場で丁寧に分解していくと、いくつかの要素に整理することができます。

1つ目は、「身体的・心理的なコンディションを整える力」です。
・毎日決まった時間に起きる
・身だしなみを整える
・職場まで移動する
・疲れたときに自分を休める、相談する

といった、とても基本的でありながら、実は多くの人にとって大きなハードルになる部分です。病気や障がい、長期間のひきこもり経験などがある場合は、まずここを整えることから始まります。

2つ目は、「仕事の場で必要なコミュニケーション力」です。
・あいさつができる
・わからないことを質問できる
・頼まれたことに対して、できる・できないを伝えられる
・困ったときに助けを求められる

これらは、決しておしゃべり上手である必要はなく、「自分を守りながら、人と協力して働くための最低限のやり取り」としての力です。

3つ目は、「作業遂行力・職業スキル」です。
・決められた手順を守る
・時間を守る
・ミスが起きたときに振り返る
・少しずつスピードや精度を高めていく

その人に合った職種や作業内容を見つけることも含め、「自分なりのペースで成長していく力」です。

そして4つ目が、「自分の人生を考え、選択する力」です。
・どのように働きたいのか
・どのくらいの時間・頻度が自分にはちょうどいいのか
・何を大切にしながら働きたいのか

こうした問いはすぐに答えが出るものではありません。就労支援の現場では、日々の対話や体験の積み重ねを通じて、本人の中からゆっくりと言葉を引き出していきます。


2. 「いま働く」だけで終わらせない支援とは

就労支援のゴールを「就職した瞬間」としてしまうと、支援はどうしても短期的になってしまいます。しかし、実際には「就職してからが本番」です。

職場に入ってから、
・想像していた業務と違って戸惑う
・人間関係で悩む
・体調と働くペースのバランスが崩れる
・ミスが続き自己肯定感が下がる

といった壁にぶつかることは、多くの人に共通する現実です。ここで支援が途切れてしまうと、「やっぱり自分は働けないのではないか」という思い込みが強まり、再び社会との距離が開いてしまうこともあります。

だからこそ、「働く力」を未来へつなぐ就労支援は、次のような視点を大切にします。

● 就職前
・その人の特性や希望を丁寧に聞き取り、無理のない働き方を一緒にイメージする
・見学や実習を通して、「働く場の空気」に触れてもらう
・通所や訓練の段階から、生活リズムづくりやコミュニケーションの練習を行う

● 就職直後
・職場での戸惑いや不安を、すぐに相談できる窓口を用意する
・支援者が職場訪問を行い、本人と企業側の両方をサポートする
・「成功体験のハードル」を低めに設定し、小さな達成を一緒に喜ぶ

● 就職後しばらくたってから
・担当業務の見直しや、勤務日数・時間の調整を企業と相談する
・将来のキャリアや働き方について、焦らず話せる場をつくる
・「辞める=失敗」ではなく、「自分に合う形を探し続けるプロセス」と捉え直す

このように、就職前・就職直後・就職後と時間軸を通して関わり続けることで、「働く力」は一度きりではなく、少しずつ柔軟に育ち、未来へとつながっていきます。


3. 支援の主役はあくまで「本人」であるということ

就労支援の現場では、どうしても「支援する側」と「支援される側」という構図が生まれます。しかし、「働く力」を未来へつなぐうえで、もっとも大切なのは、支援者が一歩下がり、「主役は本人である」という姿勢を崩さないことです。

例えば、
・職種を決める
・勤務時間帯を考える
・通勤手段をどうするか
・困ったときに誰に相談するか

こうした選択をすべて支援者が先回りして決めてしまうと、短期的にはスムーズに進むかもしれませんが、本人の「考える力」「選ぶ力」「自分で決めて動く力」が育ちません。

一方で、本人にすべてを委ねてしまうと、不安が強くなり、一歩も進めなくなるケースもあります。大切なのは、

・情報をかみ砕いてわかりやすく伝える
・いくつかの選択肢を一緒に整理する
・メリットとデメリットを冷静に言語化する
・最後の決定は本人ができるように、そっと支える

という「並走型の支援」です。

このプロセスを何度もくり返すことで、本人の中に「自分で決めていいのだ」「自分の人生は自分のものでいいのだ」という実感が少しずつ育っていきます。これこそが、「働く力」を未来へつなぐうえで欠かせない土台となります。


4. 家族とともに歩む就労支援

就労支援は、本人と支援者だけの取り組みではありません。特に若い世代や、長く家族と暮らしてきた方にとって、家族の理解と関わりは「働く力」を未来へつなぐ大きな支えになります。

家族はしばしば、
・心配するあまり、つい口出ししすぎてしまう
・過去のつらい経験から、「また失敗するのでは」と不安になってしまう
・どう応援すればいいのか分からず、距離を取ってしまう

といった揺れの中にいます。

そこで就労支援の現場では、

・家族向けの面談や勉強会を行い、就労支援の仕組みや、本人の特性への理解を深めてもらう
・「できていること」「成長している点」を、支援者から家族にしっかり伝える
・家族の不安や疲れを受け止めつつ、「家族だけで抱え込まなくてよい」と伝える

といった関わりを大切にしています。

家族が「一緒に考えてくれる存在」から「最後の決定を尊重して見守る存在」へと少しずつ役割を変えていくことで、本人は安心感と自立心の両方を持ちながら、働く一歩を踏み出しやすくなります。


5. 企業と社会とともに育てる「働く力」

「働く力」は、支援事業所の中だけでは完結しません。その人が実際に働く場である企業、そして地域社会との協働が欠かせません。

企業にとっても、多様な人材を受け入れることは、単なる社会貢献にとどまりません。

・業務の見直しや分担が進むことで、全体の生産性が上がる
・職場でのコミュニケーションのあり方を見直すきっかけになる
・異なる背景を持つ人材と働く経験が、組織の柔軟性や創造性を高める

といった、大きなプラスがあります。

就労支援の現場では、

・障がいや特性に応じた合理的配慮の提案
・業務切り出しやマニュアル化のサポート
・職場定着に向けた企業担当者との定期的な振り返り

などを通じて、企業と一緒に「働きやすい場づくり」に取り組みます。

また、地域社会も大切なパートナーです。地域のイベントやボランティア、短時間の仕事など、「社会とゆるやかにつながる場」があることで、

・いきなりフルタイムで働くのではなく、段階的にチャレンジできる
・「働く=会社に就職する」だけではない多様な選択肢に気づける
・人との関わりの中で、自分の役割を実感できる

といった経験が積み重なります。

こうして、企業・地域・支援機関がそれぞれの役割を果たしながら連携することで、「働く力」は個人の中に閉じたものではなく、社会の中で育まれ、未来へと広がっていきます。


6. 「失敗」を未来への学びに変える視点

「働く力」を未来へつなぐ支援のなかで、もう一つ大切なポイントがあります。それは、「失敗」と見える出来事を、どう捉え直すかという視点です。

・試用期間で終了になってしまった
・体調不良で退職せざるを得なくなった
・人間関係のトラブルで職場に行けなくなった

こうした経験は、本人にとっても家族にとっても大きなショックになります。しかし、就労支援では、

・何がつらかったのか
・どこで無理をしていたのか
・どんなサポートがあれば続けられたか
・次に同じような状況になったとき、どう対応したいか

を一緒に振り返ることで、「失敗」をその人のストーリーの中に位置づけ直していきます。

「うまくいかなかった経験があるからこそ、自分に合う働き方が見えてきた」
「一度辞めたけれど、支援を受けながらまたチャレンジできた」

こうした経験は、本人にとって大きな自信となり、次の一歩を踏み出す原動力になります。

就労支援の役割は、単に「成功した就労例」だけを増やすことではなく、一度つまずいた人が、再び立ち上がり、自分のペースで未来へと歩んでいけるように伴走することにあります。


7. 「働く力」を未来へつなぐという約束

就労支援の現場で日々出会うのは、「働きたいけれど不安が大きい人」「過去のつらい経験から、もう一度だけチャレンジしてみようとしている人」「今はまだ働ける気がしないけれど、どこかで変わりたいと思っている人」など、さまざまな思いを抱えた方たちです。

その一人ひとりに共通しているのは、「働く力」は決してゼロではないということです。たとえ今は見えにくくても、日々の生活のなかで、すでに発揮されている力があります。

・家族のためにご飯を作っている
・趣味の世界で集中力を発揮している
・ネットや本を通じて知識を集めている
・誰かの相談に乗っている

こうした一見「仕事とは関係なさそうな行動」の中にも、その人なりの強みや可能性が隠れています。

就労支援は、その小さな力を丁寧にすくい上げ、「働く」という形に結びつけていく営みです。そして、今日できたことを明日へ、今年の経験を来年へ、今の一歩をこれからの人生へとつないでいく長い旅でもあります。

「働く力」を未来へつなぐ支援とは、

・その人の中にある可能性を信じ続けること
・目の前の困りごとに一緒に向き合うこと
・うまくいかなかったときも、「ここから何が学べるか」を一緒に考えること
・本人・家族・企業・地域が、ゆるやかにつながり支え合う土台をつくること

これらの積み重ねそのものだといえるでしょう。

就労支援の扉を叩くタイミングは人それぞれです。しかし、どの段階からでも遅すぎることはありません。「今の自分」から始めて、「これからの自分」へとバトンを渡していく。その過程を共に歩むことこそが、就労支援に携わる者の、そして社会全体の大切な役割なのだと思います。


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